yuima yoga

Yuimayoga ぶどう泥棒
スペインはワインの産地、私が住んでいた周りは、そこら中がぶどう畑でした。
スペインへ着いてすぐ、ぶどうを差し出してくれた部屋のメンバーたち。
日本でも飢えた生活をしていた私は、ぶどうなんて見たこともなかった。
ぶどうを提供してくれた上、「おまえも仲間だ」と言ってくれた時、いじめが原因で学校をやめていた私には、仲間という夢のような言葉に感激!
しかし、そんな甘くはなかった。「あんたも共犯者、ぶどうがすっかり食べてなくなったので、真夜中に出発する。」と。
ぶどう畑を囲む針金は、場所によっては、触ると電気が走るので慎重にする必要があった。
戦争映画の1シーンのように、地面をはいずりながらバケツ一杯にぶどうを収穫。
犬の吠え声と、そのすぐ後にぶどう畑のおじさんの叫ぶ声がきこえた。後ろを振り向くと拳銃のようなものを持ってキョロキョロ暗闇に隠れる私たちを探している。
まだスペインに来たばかりなのに、ぶどう泥棒が原因で私殺される?!
仲間の「走れ!後ろを振り向かずに、とにかく走れ!!」の声に必死で走る、何とか逃げ切ったものの、怖くて心臓はドキドキ、身体は震えていた。
後に聞いたのですが、あれは麻酔銃だそう。殺す気ではなかったことにホっとした。
今私は岡山の田舎で暮らし、野菜や果物を頂いて過ごす日々。
時々「イノシシに畑やられたわ~」とか、「鹿が…」「カメが…」なんて農家の人から聞くと、胸がドキッとします。「ごめんなさい、人が…ぶどうを盗みました」
その時の私はぶどうを一生懸命つくるおじさんのことなんて考えたこともなかった。
私たちは、自分の目で世界を見、育った環境や生きていく過程で、正しいと思うことが出来上がっていきます。飢えた私たちはそれが、生き延びる道とさえ思っていたのかもしれない。私にも飢えた背景、仲間を裏切れない背景があったように、もちろん誘った子にも背景があった。
立場を変えてその人の背景を知ることで、見えるものが変わってくる。
このお話も誰を主人公にするかによって見えてくるものは大きく変わる…
しかし、このお話の中で一番悪いのは、やはり私です。ぶどう畑のおじさんごめんなさい。